2016年4月5日火曜日

「激変する介護の現場にテクノロジーの力を加える」 ソーシャルスタートアップ現場訪問、株式会社aba

突然ですが、
みなさんは、他人のう●この始末をしたことありますか?

年代やご職業などによっても、その答えは様々だと思いますが
これがどれだけ大変なことかはやってみないとわからないですよね。

わたしも実家に帰るたびに、じいちゃん、ばあちゃんの
介護をしている父母や兄弟の姿から、その苦労を感じるだけで
これまで実際に手を動かすことはほとんどありませんでした。

ヒトが生きるということは
食べる、着る、寝る、歩く、風呂に入る、排泄するということ。

それが自分でまかなえなくなった人たちを支えるのが
「介護」という仕事だと思います。

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さて日本の総人口は平成 26(2014)年
10月 1 日時点で1億 2,708万人だったそうです。
うち75歳以上人口は 1,592万人で総人口に占める割合は 12.5%

1980年時点では75歳以上人口は366万人(9,1%)
つまり、この35年たらずで1100万人以上もふえているんです。

(参考:厚生労働省、平成27年版高齢社会白書)

つまり日本の「介護」分野は、この30年間で
急成長しながら、つねにはげしく変わり続けてきたということ。
これも数多くの、起業家や行政、そして現場の方々が
なんとか踏みとどまってきた結果だと思います。

とはいえ、もろもろ急ごしらえ。
だからこそ、この領域にはまだまだ変革の余地があるともいえます。

そんな介護の領域で「必要な時に必要な介護」を
ミッションに掲げるスサノヲ2期メンバー株式会社aba宇井さんの現場に
今回は訪問させて頂きました。


集合時間は夜8時半@東船橋駅

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abaさんはいま「排泄検知シート」という製品の実証実験を
船橋にある特別養護老人ホーム「さわやか苑」さんにて行っています。
http://www.sawayakaen.com/

宇井さんは、会社経営、製品開発のかたわら
夜間は介護施設の現場に入って、介護職の方々と利用者さんに
製品を試してもらいながらその精度を高めているのです。

ということで、当日も宇井さんの仕事終わりに合わせて
夜9時を回ってからの現場訪問。

さわやか苑のスタッフのみなさんにも、
快く迎えていただき施設内をご案内頂きました。
ちなみにさわやか苑さんは、あのロボットスーツHALの
導入にも積極的に協力をされているそうです。

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さて、現場訪問にて最初に印象的だったのは
宇井さんが介護職のみなさんととても仲が良いこと。
信頼されていることがわかるその様子から
宇井さんの現場での誠実さが伺えます。
一通り施設の概要について伺ったのち
静まり返った部屋のなかにそぉ~と入らせていただき
実際に利用されている機器の様子を拝見。
この装置は排泄物の匂いを検知して、
「排泄がおきているよ!」と介護職の方に知らせるのです。
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だけど、この装置があることで、何が変わるのでしょうか?

たんに排泄と言葉にすると、簡単ですが、
この処理は慣れていない方にとっては本当に大変。

身体も動かせない、言葉もうまく通じない高齢者の身体の下にある
おむつを脱がせて、それを上手くまとめて、また新たなものを着せる。
想像するだけでも、それがどれだけ大変な行為かは察せます。

宇井さんいわく、特におむつの外に便がもれでると
その処理はベッドのシーツ替えから、場合によっては
洗浄にまで至り、とても一人では行えないものになるのだそうです。
「便がおむつの外にでるか出ないか?」
それだけで、介護職のみなさんにとっての手間が
大きく変わってくるのです。

さらに、ここで重要になるのが、
介護はいまなお人の手がかかる労働集約型のサービス業であり、
どうじにおおくの介護施設は慢性的に人手不足だということ。

とくに夜勤の場合などは、一人の職員さんが一度に
二十人以上もの利用者さんを看る必要があったりするのです。

だからこそ、たった一件のおむつ交換ですら、
その手間が削減されるだけで施設全体の介護の質にも
おおきな違いが生まれてくるのだそうです。

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さらに、この排泄検知シートでは利用者さん個別の
排泄リズムをつかむことも見据えているそうです。

たとえば
「●●さんは、下剤投与から何時間後に排泄する。」

そういったことがわかるようになれば

「●●さん、そろそろお手洗いにいっておきませんか?」

と事前に声をかけることもできる。

そうすれば「漏らす」という状況そのものを回避できるし、

「自分でトイレにいこう!」

という前向きな意識も、生活もより長く可能になるかも
知れないとかんがえているのだそうです。

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宇井さんがabaの事業を通じて行っているのは
この急ごしらえでつくられてきた労働集約型の「介護」の領域に
テクノロジーの力を加えることだと思います。
ちなみに、abaさんではこれを「Care Tech」と呼んでいます。

これにより
「介護を行うひと」にとっての負担を軽くすることにもなります。
経験値がなくても質の高いサービスを提供できるようになります。

そして、その先には、できるだけ自分のことは自分でできる
尊厳のある世界を目指しているのだと感じました。

ワタシたちにとって、いま「介護」の現場で起きていることは
決して他人事ではありません。

近い将来、親の世話をすることになるでしょうし、
もう少し先にはワタシたち自身が「介護」される側にまわります。

そんなとき「自らの意志で」
食べて、着て、寝て、歩いて、風呂に入て、排泄する。
それが当たり前になる未来に生きたいと思いませんか?

そんな未来を実現しようと、いま真摯に
現場に向き合い続けている宇井さんの姿に
感動しっぱなしの二時間でした。

宇井さん、さわやか苑の永井さまをはじめ職員の皆様
貴重な機会を頂き本当に有難うございました!!!

以上