2016年2月1日月曜日

薬物依存、社会の真っ暗な一隅を照らす困難。 SUSANOO現場訪問⑤、DOUGUBAKO

16年1月中旬、SUSANOO三期メンバー
DOUGUBAKOさんの現場に訪問しました
DOUGUBAKOのメンバーは看護師で、普段、新宿区のクリニックにて
薬物依存症の方々のデイケアサービスを行っています。
彼らはこの仕組をどうにかして、持続可能なものにしようと奮闘中。

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私達がお邪魔したのは、その新宿にあるクリニックです。

このクリニックは精神科のお医者さんだそうです。

そして、このクリニックに併設するカタチで、
日本ダルクさんという薬物依存症から抜けだそうとする人々の
自助組織がオフィス兼、ワーキショップ会場を構えています。

さらに、同じくビルの地下にはDOUGUBAKOのメンバーが
携わっている薬物依存症患者さんむけのデイケア施設が
整っているのです。

まずは、地下にあるデイケア施設に伺わせて頂きました。

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地下にある施設ですが、天井が高く
バスケットゴールなど運動用具もある広いスペース。
その奥に、幾つものソファやテーブルが並ぶ、部屋があります。
部屋の中には、見た感じ40代以上のおじさんばかり。
みなさんテレビを眺めたり、書き初めのようなことをされたり、
思い思いに過ごされていますが、お互いの会話が
積極的に行われている感じではありません。

DOUGUBAKOのメンバーによると、
日中どこにも行き場がない人達が、この場で時間を過ごすとのこと。
予想外に自由な雰囲気に、

「何か社会復帰プログラムとかそういうのはやるんですか?」

と聞くと、

「彼らの抱えている背景はあまりにも複雑で、
そもそも人に正直に話をすることすらできない。
だから、ここではまず、何かを強制させるようなことはせず、
自分がやりたいことを、やりたいときにやっていいんだよ。
と受け入れることから始めています。」

という答えを頂きました。

「薬物依存の方が、ちゃんと社会復帰する割合ってどんなもの?」

と聞くと、

「はっきりとはわからないけれど、
実際は2割もいないんじゃないでしょうか。
ここにいる人もある日突然来なくなったりするし。
結局、また薬に走ってしまったりすることになる。」

という答えを頂きました。
このデイケアの場は、薬物依存症患者さんの
セーフティーネットとしての役割を担っているのです。

「あの、写真を撮っても大丈夫ですかね?
この場の様子がわかればいいんです。患者さんの
顔は入らないようにしますが・・・」

「ありがとうございます。いろんな方が見学に来ますが、
そんな風に配慮される方は本当に稀なんですよ。」

との回答にも、またこの場、この問題に対する
社会の姿勢を垣間見ることになりました。

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続いて、併設する日本ダルクさんのオフィスへ。
スタッフの方ももと薬物依存症とのこと。

まず、お話を伺って驚いたのは、
「普段が100だとして、温泉に入って嬉しいとか、楽しいとか、
美味しいもの食べたとか、そういうので、110、とか120とか
快楽を感じるんです。しかし、薬物では、これが、一気に
1000とかいう快楽になる。ケタが違うんです。だから、
怖いんです。」

ということ。さらに、
「その気になったら10分くらいで覚せい剤は手に入ると思いますよ」

「でも、結構高価なものなんじゃないですか?」

「いや、その気になれば、タダでも手に入ると思いますよ。」

「え!?そうなんですか?」

それ以上詳しくは、伺いませんでしたが、
それほど、私達の身近に薬物は出回っているらしいのです。
さらにスタッフの方のお話で印象に残ったのは、
薬物依存症患者のみなさんの繊細さ、です。

「本当に些細なことなんですけど、
ある飲食店で、注文したものが出てこなかった。
だけど、私はそれを店員さんにいうことが出来なかったんです。
勿論、代金にはその分も含まれていて、支払いました。
そしてお店を出た後に、自分自身を攻めるんです。
どうして、『ちゃんと言わなかったんだ!』ってね。
こんな些細なことでも、自分自身にとっては
大きなストレスになっていく、そしてまた
一番安易な解決策としての薬へとたどり着くんですよ。」

このような小さな悩みは、どんな人間でも
多かれ少なかれ抱えていたりしますよね。
違いは、それにどこまで敏感に向き合うか?

彼らの繊細さに対して、如何に自分自身は鈍感か。
考えてみれば、ある種の鈍感さは、システム重視の
現代社会を生き抜くうえでは、必須のような気もします。
その鈍感さを持ち合わせない繊細な人々が、
ときに薬物依存というカタチで、システムの外に出て行く
とも考えられるのではないでしょうか。

そんな薬物依存からの脱出を心から望む患者さんたちは、
ここで、互いの思いを吐露するセッションを行っています。
20代から50代くらいの男性15名ほどが、輪になって、
それぞれ御自身の心情をとつとつと語ります。
周囲の方々は、ただただ、それを聞いている。

こういった場を通じて、
「自分は一人ではない」ということを実感することが、
薬物依存から立ち直るための大きな支えになるそうです。

これも、同じだなと思いました。
薬物依存であってもなくても、
自分のことをわかってくれる誰かがいることは大事。
そして、その存在が自分自身を救ってくれる。

そうやって考えていくと、
薬物依存の患者さんと、彼らが復帰に向けて集まるこの場は
社会の最も敏感な部分のように見えてきました。

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とはいえ、ここは本当に先の見えない現場です。
薬物依存の方は次々に増えていき、一方で、
どれだけ時間をかけても、依存から抜けきることができるかは、
本人次第。そして、誘惑は無数に広がっているのです。

さらにこの問題が難しいのは、「自己責任論」を免れない点と、
「社会復帰」というゴールが限りなく遠い点です。
患者さんの一部にはそもそも家庭環境などから、
十分な教育も受けずに来た方もいらっしゃるそうで、
ゆえに、薬物依存から抜けだしても、ベーシックな働く力がない。

この問題の奥深さは、私達の社会がかかえる
深い深い闇へと直結している、そう感じています。

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この問題の解決策を考えるのは、
決して容易ではないと思いますが、
まず、現時点でこの闇に光を当て続けている、
DOUGUBAKOや日本ダルクの皆さまには頭が下がります。
みなさま、有難うございました。



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